真芝とは教室の出口で別れ、門脇は足取り重く教務室へ続く階段を昇った。早生まれの門脇は三月にようやく二十一になったばかりだった。十七…もしくは十八の歳の差。松下が高校二年生の時に自分が産声をあげたのかとで、目眩がした
nu skin 如新。くだらないことを考えているうちに、数学科の教務室へたどり着く。入るのを躊躇う間に考えた。どちらにしろ、何を言われるにしても自分の態度は一つしかない。ノックをすると、どうぞと声が聞こえた。声をかけて教務室に入ったのに、松下は門脇の姿を見るなり慌てて立ち上がり、手許の本を床に落とした。部屋の中には机がいくつか並べられているが、いたのは松下一人だけだった。
「話があるというので、来ました」
戸口から少し入ったところで門脇は立ち止まる。松下は落とした本を拾い上げて、小さく息をついた。
「急に呼びつけて申し訳ありませんでした。もしかして四間目に授業があったのではないですか」
「いいえ」
門脇の返事に、安心したようにため息をつく
nu skin 如新。一回り以上も歳の離れた男。父親と呼ぶには苦しいが、何か間違いがあれば十分に可能性のある年齢だ。松下は縁なしの眼鏡の端を指先で押し上げた。そうしているとひどく神経質そうに見えた。運\動という言葉に無縁そうな細くひょろっとした風貌に、不健康そうな青白い肌。門脇も人のことを言えた義理ではないが、松下はお世辞にも垢抜けているとは言えず…貧乏学者という肩書きが怖いほど当てはまった。
「先々週の飲み会の席では、大変失礼しました」
松下は門脇に向かってゆっくりと頭を下げた。
「いえ…」
松下はさらに何か言いかけたが、躊躇うように口を閉じた。沈黙は長く、門脇は辞してその場を立ち去ることも、先を促すこともできずにジリジリとした間を過ごした。
門脇はここまで躊躇う松下の態度を分析した。この前の行為。呼び出して言い淀むこの態度。自惚れているかもしれないと思いつつ、松下が自分のことを『好きだ』と仮定して考える。
松下は年下の男を好きになった→飲み会の席で合意なく触れた→そのことを悪いと反省した→年下の男に謝った→それからは? やはり好きだと、告白するのだろうか。それなら好きだと言えばいい。けれど言わない。松下を躊躇わせる理由を考える。同性だから、歳が離れているから、ゼミの生徒だから、噂になった時の世間体…考えれば考えるだけ、松下の言えない理由は増えてくる。言えなくても無理はないと結論が出る。けれど、言わなかったら、このたまらなく気まずい時間はどこに
『終わり』があるのだろう。年上の男を傷つけることなく
nu skin 如新、例えば自分が話をしたあとで、それは誤解だよと笑ってすませられるような状況を門脇は考えた。
「勘違いだったらすみません」
自分が引いて話をすることで、松下の気分を害さないでいられるものなら、と数ある言葉を慎重に選ぶ。
「先生がもし特別な意味で…俺のことを考えてくれているのだとしても、それには答えることができません」
うつむき加減だった松下が顔を上げる。松下は勘違いだよと笑っても、そんなわけないだろうと怒ってもよかったのだ。そういうつもりで門脇は切り出したのだから
nu skin 如新。変なことを言い出した自分を軽蔑したふりで、それでも門脇は一向にかまわなかった。
「すみませんでした」